イベントレポート

自分たちの活動がうまく伝わるために必要なことって?

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大学や所属団体の枠を越えて学生が集まり、互いに交流する中で新しい出会いや発見を生む「学都ビラキ」。
毎回テーマに沿って、ワークショップや意見交換を行います。

8月〜9月にかけて、3回連続で開催した連続講座のテーマは、「伝える」。
自分がやりがいや面白さを感じている活動を、周りの人にどうすれば上手く伝えられるか?
「伝える」ために必要な考え方や事例を学びました。

今回、講師を務めていただいたのは、伊藤光弘さん。
長く大手広告会社でクリエイティブディレクターを務められた方で、女川町の「きぼうのかね商店街」でのポスター展などにも関わっています。

今回は、講座の様子をダイジェストでお伝えします!

あなたの情報は、1かけらの砂粒と同じ?

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「今1年間に消費されているデジタル情報はどのくらいの量だと思いますか?」
会の冒頭、伊藤さんからこんな問いかけがありました。
まったく見当もつかず、首をひねる参加者たち。

答えは、1.8ゼタバイトだそうです(2011年時点)。
これまた聞き馴染みのない単位ですが、1粒の砂を1バイトとしたときに、世界中にある砂浜の砂粒を全て集めた数に匹敵するのだとか。

※ゼタバイト=10の21乗。ハードディスクの容量などで「テラバイト(TB)」という単位を聞いたことがある人も多いと思いますが、1ZBはその1TBの1,000,000,000(10億)倍にあたります。
参考:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc131110.html

これではいくら発信する側が「伝えたい!」と思っても、膨大に流れている情報の中から見つけてもらうだけで至難の業ですよね。

そこで重要になるのは、「どうやったら見つけてもらえるか?」という視点だといいます。

どんな情報が「伝わる」かを考える

参加者の自己紹介で、参加者それぞれが好きな音楽を聞き、「それってどうやって知った?」と問いかけた伊藤さん。
すると、6人のうち2人が、同じきっかけで好きなアーティストを知ったと答えました。
そのきっかけとは、「母親」。
そのほか、「友達に勧められて」という回答をした参加者もいました。

「誰からの情報でも同じように受け取るわけではないよね?信頼している人からの情報が一番耳に入ります」
無数にある情報の中から、届けたい相手に情報が届くようにするには、相手から情報を見つけてくれるのを待っていてはなかなか事が進みません。
ある人がその情報をシェアすれば、その人を信頼している、つまりその人と近い価値観を持つ他者にも情報が届く。そうすると、より多くの人に好意的に受け取ってもらえる確率はぐっと高まります。

多くの人に情報が届きやすくなる、シェアしてもらうにはどうすればいいか?
伊藤さんが挙げたのは、「何を伝えるのか」ではなく「何が伝わるのか」を考えること。
どんなコンテンツがシェアされやすいのかを知り、自分たちの活動や発信できる情報にそういった側面がないか、探して情報発信していくことで、自分たちの出した情報を受け取られやすくすることができます。
そんな「シェアされやすいコンテンツ」の特徴・キーワードを表すものとして、情報発信の際に気に留めていきたいのが、下に挙げた6つの項目「STEPPS」です。
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「シェアされやすい」コンテンツとは?

当日は、それぞれについて事例も交えて解説がありました。
今回はその中のひとつ、「感情(Emotion)」について、当日紹介された事例と一緒に解説していきます。

「感情(Emotion)」とは、その名の通り、日々の生活の中で感じる、感動・悲しみ・怒り…など様々な感情のこと。
ただ出来事を伝えられるより、その出来事を目にしたときに、何かの「感情」を感じたときのほうが、印象に残りやすい、シェアされやすいといいます。
実際に事例を見てみましょう。

事例1:スーザン・ボイルの「夢やぶれて」

イギリスのスター発掘番組で、その美声が話題になったスーザン・ボイルさん。
その名前や、歌っている姿を一度は目にした人も多いかと思います。

放映された当時、世界中で大きな感動の渦を引き起こし、様々なところでシェア、取り上げられたこちらの動画。
歌い始める前は苦笑い・冷ややかだった審査員や観衆の表情が、一声歌い始めた途端に一気に変わったところからも、その衝撃の大きさが伺えます。
「あなたがエレイン・ペイジ(イギリスの有名歌手)みたいになりたいと言ったら、皆あざけるように笑いましたが、今は誰も笑いませんよ。本当に素晴らしいパフォーマンスでした」(審査員のコメント、動画中2分11秒〜2分24秒ごろ)

この動画でのポイントの一つは、純粋に歌そのものが上手で、聞く側の心をゆさぶったこと。
そしてもう一つは「受け取り手の『予定調和』を崩した」ことだと言います。
まさかこの見た目からこの歌声が出てくるとは…!という「意外性」があったことで、受け取り手の感情の落差が大きくなり、より大きな感動が生まれた。
大きな感動が生まれたことで、「こんな素敵な出来事があったよ!」と誰かに思わずシェアしたくなる、そのエネルギーも大きくなったということでしょう。

心をゆさぶるような出来事は、受け取り手にも伝わりやすく、「共有したい」「誰かに伝えたい」と、人を動かす大きな要因になる。そこにギャップがあれば、その効果はさらに高まります。

  • みなさんの活動の中には、誰かの心をゆさぶる場面はありますか?
  • その場面に、ちょっとした意外性はありませんか?

事例2:東京ガスのテレビCM

この動画のポイントは、「ありふれた日常の場面」にフォーカスしていること。
誰しもが「それ、あるよね!」と思えるような状況を取り上げていることで、自分自身の状況になぞらえて感情移入しやすく、メッセージを素直に受け取りやすい構造になっています。
何も、大仰なことでなくてもいい。誰しもが持っている心の琴線に触れる出来事は、ささいなことでも感動になり、これもまた「この気持ちを共有したい」「誰かに伝えたい」というモチベーションになります。

  • みなさんの活動の中に、日常多くの人が「それ、あるよね!」と感じるようなポイント、メッセージはありますか?

活動の悩み、一緒に解決しよう!

計3回、トータル6時間にわたった講座。ここではほんの一部しかご紹介できませんでしたが、これ以外にも、「伝わる」ための様々な仕掛けを学んでいきました。
もっと内容が気になる!自分の団体・活動でも応用して考えてみたい!という方は、ぜひ気軽にお問い合わせください!

「学都ビラキ」では、今後も学生団体の持つさまざまな活動の悩み・課題について、一緒に考えたりディスカッションしたりする機会を設けていきます。
開催情報は、「1000プロ」サイト上や、Gakuvo東北のFacebookページなどでお知らせしていきますので、ぜひ定期的にチェックしてくださいね!

「文・写真:澤畑学(一般社団法人ワカツク)」

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