学生団体紹介

地域と医療系の学生をつなぐ架け橋に「Tohoku Community Medicine club(TCM)」

TCM

今回紹介する団体は「Tohoku Community Medicine club」、略称は「TCM」。
東北医科薬科大学のみなさんで構成される団体で、地域医療をテーマに幅広く活動されています。

具体的にどんな活動をしているの?
多忙と言われる医療系学生が、課外活動を続けられる理由は?
活動を通して見えてきた、個人の“やりたい”は?

メンバーにお話を伺ってきました!(取材日:2018年10月19日)

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取材を受けていただいたのは、3名のみなさん。
写真左から、代表の矢吹理人さん(東北医科薬科大学3年)、松川洸子さん(同2年)、寺島嵩人さん(同1年)です。

活動を通じて地域や住民を知る

TCMでは、地域医療の現状を学ぶため様々な地域に赴き、ときにはワークショップを開催して地元住民の方とのディスカッションを行っています。目的として大きく2つあると、代表の矢吹さん。
矢吹さん「まずはいろいろな地域に行ってその土地を知り、医療系学生として将来に活かすことを目的に活動しています。そして、私たちが様々な地域の方と学びの機会を持つことで、その地域の活性化につながってほしいと考えています」。

過去には、活動で北海道まで足を運んだこともありましたが、ここ1年は福島県飯舘村での活動に注力しています。

福島県出身の寺島さんは、飯舘村での活動に惹かれてこの団体に入ろうと思ったそう。
寺島さん「先日、飯舘村でワークショップを行ってきました。テーマは『医療・福祉・栄養学などの分野に従事する方の多職種連携(※1)』について。参加者は、私たち学生と地域の方で、職種や立場の異なる人たちでディスカッションをしてきました。多職種連携についてはもちろん、地域医療の課題を解決するためには行政を巻き込む必要があることを学びました」。
※1)多職種連携
専門性の異なる専門職が連携し、より質の高い医療の実現を目指す取り組み。例えば、医師・看護師・保健師・栄養士・介護士など、患者に携わる様々な専門職が連携しあうこと。

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自身のキャリアプランから逆算し、この活動を始めたメンバーもいます。

松川さん「私は地域枠(※2)で入学しました。東京出身なので、地域のことを知りません。この活動に参加することで、地域のことを知れるかなと思ったのがきっかけです」。
※2)地域枠大学を卒業し医師になった後、一定の期間を大学が所在する地域で勤務することを条件に、奨学金支給等の措置をとる制度。

矢吹さん「最初は、顧問の先生と活動を始めました。私がもともと災害医療に興味を持っていて、地域医療に取り組んでいる先生と出会い、先生と一緒に活動すれば災害医療にも学びが生きると考えました。団体としてはできたばかり(2017年に大学認可)ですし、細かいプロジェクトのあり方などは決まっていません。まだ手探りな部分があります」。

現状では、医療だけにこだわらず、幅広いテーマのワークショップに取り組んでいます。松川さんは、去年11月に参加した、飯館村でのワークショップが印象に残っているとのこと。
松川さん「住民の方の不安や要望を聞いて、具体的な提案にまとめるワークを、複数の班に分かれて実施しました。私たちの班では、放射能に汚染された土壌の処理をテーマに提案をしました。というのも、現地では汚染土壌が黄緑色の袋に入って道に置いてあり、非常に生々しい見た目をしています。そこで、マイナスイメージを払拭するため、アートのようにみせられないかという提案をしました」。

医学の勉強で多忙なため、メンバー全員が毎回の活動に参加できるわけではないといいます。そのため、地域での学びを終えた後は、大学に戻って他のメンバーにも共有するミーティングを開き、学びを深めています。
「毎回異なる地域やテーマの活動報告を聞くと、地域ごとに住民の考え方が異なることに気づき、大きな発見だった」と矢吹さん。将来、医師として働く上でも、意識する必要があると言います。

課外活動と大学の学びの相乗効果

TCMの活動で地域に赴き、様々な人と出会うことで、キャリアや地域医療に対する考えが深まったと言います。

寺島さん「地域の方とのつながりができたのが、活動の良い点だなと思っています。他大学の上級生と話す機会もあり、将来自分が活躍するイメージがつけられるので、医療現場の方はもちろん行政や様々な人たちに会いたいと思うようになりました」。

松川さん「私は座学ばかりの“頭でっかちな人”になりたくないって、ずっと思っています。対人の仕事をする上で、頭でっかちじゃだめだとTCMで活動して改めて気づいたんです。自分が患者さんだったらどう思うかを、常に考えるようになりました。あとは“地域医療”っていう言葉を説明できるようになりました。地域医療ってすごい漠然としている言葉で、実際何を指すのかは分からないなって思っていました。活動を通じて、自分が何を学んでいるのかを説明できるようになりました」。

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最後に、今後やってみたいことを聞きました。
矢吹さん「外の活動に出ていくこと、同時に新しいプロジェクトを作り、進めていきたいです。医師のキャリアには、大学の先輩の影響が強いのですが、自分たちは新設の医学部なので、そういったものがありません。新しく人脈やプロジェクトを切り拓いていく力が必要かなと考えています。個人としては、TCMの活動を通して東北をはじめ医療に課題のある地域や、変化のない保守的な地域に切り込んでいける人間になりたいです」。

大学の授業や課題がありながらも、TCMの活動に取り組むモチベーションは「将来の夢」にあると答えるメンバーのみなさんの姿はカッコよく、自分自身への刺激にもなりました。

さて、TCMでは新入部員の申込みを、随時受け付けています。代表の矢吹さんいわく「テスト前はミーティングに来ない人も多いですが、許してますね。強制はしたくないので。テストが終わった時に来てくれれば笑」とのこと!東北医科薬科大学のみなさん、TCMのメンバーとして地域医療を考えてみませんか?

「文・山下航希(東北大学4年)/写真・山下航希、TCM提供」

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