皆さんはどんな時、自分自身について考えますか?
受験や就職活動で、初めて真剣に自分と向き合う人が多いのでは…
ふだん、自分自身を見つめる機会って少ない気がします。
今回紹介するのは、中高生を対象に「自分自身」そして「将来」について考えるきっかけを提供し、未来を切りひらく手助けをしている団体です。
対話で中高生の本音を引き出す 本気の授業
「カタリバ」とはその名の通り、本音で語り合う授業のことです。
開催頻度は2か月に1回程度で、今年度は6回を予定。
宮城県を中心に、東北各地の中学校や高校へ出向いています。
2014年の設立から、これまでに延べ10校で行ってきました。
団体メンバーは「キャスト」と呼ばれ、250人を超える大学生が登録しているそうです。
この中から、開催ごとに、協力できる学生が活動しています。
さらに、キャストの中心となる事務局メンバーが、普段からカタリバの運営に携わったり、他のキャストをサポートしたりしています。
カタリバの授業では、キャストと生徒が輪になって語り合う「座談会」と、キャストが自分の人生を語る「先輩の話」の2つをローテーションで回していきます。

カタリバの授業の様子
「座談会」では、キャストが生徒に向けて質問を投げかけます。
2択で答えられるような簡単な質問からスタートし、会話で雰囲気を和ませながら生徒の心を開いていくそうです。
生徒が慣れてきたら、キャストで事前に作成したワークシートを活用しながら、「どんなことが好きなのか」や「将来やりたいことは何なのか」など具体的な質問をして、生徒自身について深く考えてもらいます。
これと同時進行で、「先輩の話」では、他のキャストがそれぞれにスケッチブックに描いた紙芝居を使って、自分の人生を生徒に語ります。

手作りの紙芝居で自分の人生を語る
生徒は、紙芝居を披露したキャストに共感できたことや、考え方の違いをワークシートに記入することで、自分自身を深掘りしていきます。
キャストとあれこれ話したことや気づきを書き込んでいくことで、ワークシートが完成した時には、自分がどんなことに興味があるのか一目でわかるようになっているそうです。
最後に、キャストと生徒でまとめを行い、それぞれに「高校生活頑張りたいことベスト3」のような目標を立ててもらうのが、カタリバの一連の流れです。
キャストの皆さんは、生徒と真正面から向き合うために様々な努力をしているといいます。
学校へ実際に出向く前には、生徒にアンケート調査を行って、「こんな生徒がいるから、今回はこういうカタリバを届けよう」と、その学校の生徒に合わせて内容を変えています。
そのため、学校ごとにワークシートの中身は違うし、生徒に最終的に立ててもらう目標も異なります。
さらに、キャスト同士で事前にシミュレーションを行って流れを確認し、当日緊張しないように万全な状態に仕上げていきます。
紙芝居で自分の人生を語るためには、自分自身と向き合わなくてはなりません。
それがしんどいので、キャストは泣きながら作業することもあるそうです。
これらのことからわかるように、カタリバの準備は非常に手が込んでいて、生徒に向き合う本気の姿勢が伝わってきますね!

ワークシートに書き込みながらの座談会
事務局メンバーの千葉さんに、お話を聞きました。
「地域や成績を一番の判断材料として進路を決めるなど、自分から選択肢を狭めてしまう生徒が多いんです。それはすごくもったいない」。
そう言って、将来についてじっくり考える機会が少ないために、中高生が自ら可能性の芽を摘んでしまっていることに課題を感じていました。
わたし自身、中高生の頃は、受験が始まるまで真剣に自分のことや将来のことを考える機会はほとんどなかったので、カタリバを受け入れている学校の生徒さんを羨ましく思います。
大学生という少し年上の先輩と語り合うという経験は、人生の中でも大きな財産になると思います。
カタリバの授業後のアンケートでは、「自分はこういうのが好きなんだって気づけた」と、新たな可能性を見出した生徒の声を聞くそうです。
こんな言葉を聞けると、次のやる気に繋がるし、やりがいも感じると千葉さんは言います。
話を聞いただけでも、カタリバの授業の準備は大変そうです。
しかしその分、カタリバを終えた時の達成感は大きなものなのではないでしょうか…!
人と話すことが好き!誰かの役に立ちたい!
そんな方は、ぜひカタリバにキャストとして参加してみてはいかがでしょう(^^)/
「文:安達朋葉(東北学院大学3年・インターン)/写真提供:宮城カタリバ/山形カタリバ」